事業協同組合は、中小企業や小規模事業者が、経営基盤を安定化させるために設立する組織と定義づけられており、原則として大企業の加入は認められません。
では、「大企業」という言葉の定義はいったいなんなのでしょうか?
日常会話でも出てきますが、なかなかその定義まで熟知している人は少ないでしょう。
ここでは、大企業の定義を確認するとともに、組合員資格についてお教えいたします。
大企業の定義として、中小企業協同組合法では、資本金が1億円を超える企業としています(小売業・サービス業の場合は1000万円、卸売業の場合は3000万円)。
また、従業員数でいえば300人を超える企業となります(小売業・サービス業の場合は50人、卸売業の場合は100人)。
原則として、この規定に基づき大企業となった企業については、事業協同組合に参加することができないとされています。
これは、市場の支配力がある大企業が、事業協同組合に参加することによって市場の健全性が失われないようにするための措置なのです。
しかし、大企業であっても市場の支配力や実情などに応じて参加できる可能性があります。
組合はもしこうした企業を参加させたい場合は、いったん組合員としての地位を与えるとともに公正取引委員会に届け出ることになります。
公正取引委員会が不許可の認定をしないかぎりは、たとえ大企業であったとしても組合員として存続できます。
こうした判定に関するご相談もぜひ当事務所までお寄せください。
事業協同組合への加入と加入拒否の正当事由
事業協同組合は、組合に参加を希望する加入申込者がいた場合、定款の加入資格に合致している方であれば、正当事由がない限り加入を拒むことができないのが原則となります。
では、事業協同組合が、加入申込者に対してどのような場合に正当事由があるものとして加入を拒むことができるのでしょうか?
事業協同組合への加入の自由は、協同組合法の基本原則で、加入を希望して組合員になりたい方がいた場合は任意に加入することができ、また、脱退もできるということが重要な要件となります。組合員になる資格を有する方が組合に加入を希望したときは、正当な理由がないのに加入を拒んだり、加入の条件として他の組合員より不利な条件をつけたりすることはできません。
しかし、法は、組合が相互扶助の人的結合体であることから、加入の自由の原則をとる一方で、組合の運営を考えて正当事由がある限り加入を拒否することを許しています。
加入を拒否できる正当な理由には、例えば以下のような理由が考えられます。
1)加入申込者の規模が大きく、これを加入させれば組合の民主的運営が阻害され、あるいは独占禁止法の適用を受けることとなる恐れがあるような場合
2)除名された者が、除名直後、またはその除名理由となった原因事実が解消していないのに、加入の申込みをした場合
3)加入申込前に員外者として組合の活動を妨害していたような者である場合
4)その者の日頃の行動からして、加入をすれば組合の内部秩序がかき乱され、組合の事業活動に支障をきたす恐れが十分に予想される場合
5)加入により、組合の信用が著しく低下する恐れがある場合
6)組合員の情報、技術等のソフトな経営資源を活用する事業を行う際に、その経営資源や事業の成果等に係る機密の保持が必要とされる場合において、例えば、契約・誓約の締結、提出などの方法により機密の保持を加入条件とし、これに従わないものの加入を拒む場合(ただし、条件はすべての組合員に公平に適用されることが必要)
7)組合の定款に定められている出資の引受け、経費、加入金の負担等が履行できないことが明らかな者である場合